少林寺拳法の乱取りとは?必要な心構えと技術や大会ルールなどを解説

宗道臣氏が香川で立ち上げた少林寺拳法は、護身のための武道です。

少林寺拳法は「人づくりの行」であり、人としてリーダーとして世の中に役立つ人材を育てることを目的としています。

これを実践するうえで重要となるのが、法形(型)の上達と乱取り(らんどり)です。

今回は、少林寺拳法の乱取りについて解説するので、参考にしてください。

この記事を書いた人

額田善之

少林寺拳法弐段の有段者。
武道の疑問を解決する記事を書くので、ぜひ参考にしてください。
なお、武道だけでなく、旅行や納豆の記事も執筆中。
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少林寺拳法の乱取りとは?

少林寺拳法の乱取りとは、修行で身につけた技(法形)を実戦で使うための修練です。技を運用することから、「運用法」とも呼ばれます。

防具を装着して、一定のルールのもとでほぼ自由に攻防を行う修練です。

近年、乱取りは運用法として大会での審査がありますが、一部の大会では「立合評価法」に移行しています。

少しややこしいですが、より少林寺拳法の教えに沿ったものになっていることは間違いありません。

少林寺拳法の教えについては、関連コラム『少林寺拳法とは?あなたの疑問に有段者の元拳士が分かりやすく解説します!』をご覧ください。

乱取りの基本概念

乱取りは、習得した技を実戦で使えなければ護身術としては役に立たないため、実戦さながらの修練をするものです。

乱取りの中で体さばきや足さばき、突きや蹴りの間合いなどを身につけることができます。

決められた時間内で、頭に血がのぼらないように注意して冷静に技(剛法の突きや蹴りが主体)を繰り出す練習を行います。

少林寺拳法の技について、関連コラム『少林寺拳法の技の基本と種類について有段者が徹底解説します!』をご覧ください。

少林寺拳法の修行との関連性

少林寺拳法の修行では、教えに従って行動することが大切です。

少林寺拳法の特に大切な教えとして、「力愛不二(りきあいふに)」「拳禅一如(けんぜんいちにょ)」があります。

これらの教えは、「力のない慈悲は無力であり、慈悲のない力は暴力であるため、拳と人格形成のための禅の修行を平行して行う必要がある」という意味です。

つまり、法形を覚えるだけでなく、心も鍛え、実践で役立てるために乱取りの修練が重要なのです。

他の武道との違い

空手や日本拳法、空道は、格闘技や競技の意味合いを強くもつ武道であるため、ルールは厳格で、安全についても細かい決まりが定められています。

少林寺拳法は護身術として発展したため、安全面でのルール策定が遅れており、乱取りにおいてはこの点が他の武道との大きな違いでした。

ただ、現在は細かなルールが策定され、安全のための防具着用が必須となったので、他の武道と同じレベルとなっています。

なお、少林寺拳法の一番の目的は人格形成であり勝ち負けを争わないという点は他の武道と一線を画します。

乱取りに必要な心構え

乱取りはあくまでも実戦形式で技を修練するための手段です。そのため、危険な頭部や金的への強い攻撃はしてはいけません。

興奮して相手と対峙すると、攻撃に歯止めがかからず、危険行為をしてしまう恐れがあります。

そのため、冷静に相手の心を読んで、体さばきや足さばきで攻撃をかわし、反撃を行う一連の動作を身につけることに主眼を置くことが必要です。

乱取りに必要な準備と意識

少林寺拳法には乱取りを行うための明確なルールがなく、死亡事故が何度か発生したため、基本ルールが策定されたという苦い過去があります。

そこで安全を守るために、ヘッドガードやファールカップ、胴、拳サポーター、マウスガードなどの使用が義務付けられたのです。

練習時も大会でも、必ず安全装備を身につけて乱取りを行ない、危険行為を行わないように意識して臨む必要があります。

乱取りで事故を避けるための注意点

現行ルールに加え、道場ごとの特別ルールを設けることが大切です。拳士のレベルに応じた攻撃の制限をかける必要があるでしょう。

道場によっては、乱取りを行わないところもありますが、これも一つの解決策でしょう。

乱取りをする場合は、防具をきちんと身につけることで事故を防ぎ、心と身体を鍛えるための修練を行う必要があります。

とにかく、安全に配慮することが事故を避けるためには必須です。

乱取りの技術と運用法

乱取りでは、日頃の技の修練で基本ができていることが必要です。

乱取りの技術は身につけた技をどのように実戦で活かしていくかの技術ということになります。

どのように技をうまく連携して使えばよいかを考えながら乱取りを行うため、乱取りのことを運用法と呼ぶのです。

基本技とその応用

乱取りの基本技は、相手の攻撃をかわすための足さばきや体さばき、受け、反撃のための突きや蹴りとなります。

攻撃をかわしたのちに、一撃で反撃を決められるとは限らないため、連続で攻撃する「連反攻(れんはんこう)」が必要です。

この連反攻が応用技となります。また、相手の攻撃の力を利用して、柔法の関節技や投げ技を仕掛けることも応用技の一つです。

効果的な稽古方法

恐怖心を和らげ、怪我を防ぐために防具を身につけて修練することが上達には効果的です。

乱取りを繰り返し行うことで、実戦になれてくるため、間合いや阿吽(あうん)の呼吸を感じることが可能になります。

相手の攻撃を見極めるためには、短時間の乱取りで回数を増やすことがよいでしょう。

また、お互いに恐怖心をあおらないように、冷静にリラックスして和気あいあいと乱取りを行うことが上達への近道です。

少林寺拳法の大会での乱取り

乱取りイメージ

コロナの影響もあり、中止されていた乱取りが大会でも解禁になりました。

大会では、技の完成度や習熟度を審査する「演武」と実戦に即した技の連携ができているかを審査する「運用法(乱取り)」が行われます。

もちろん、礼儀作法についても審査されるので、気をつけましょう。

大会での乱取りのルール

安全面を考慮し、ルールでは少林寺拳法公認の以下の防具とマウスピースを着用することが必須です。

  • ヘッドガード
  • ボディプロテクター
  • ファールカップ
  • 拳サポーター

安全面を考慮し、ルールでは以下のような攻撃の仕方への決まりが定められています。

  • 上段への加撃については、ヘッドガード前面部への直突を原則とし、全て当止め。
  • なお、ヘッドガード側面部・背面部への加撃は禁止。
  • 上段への蹴りは全て禁止。
  • 中段への攻撃については、ボディプロテクター(胴)への攻撃であれば可能。
  • 下段への蹴り技や刈足、金的攻撃は禁止。
  • 投げ技全般を禁止
  • 倒れた相手への加撃

魅力あふれる武道である少林寺拳法を始めよう!

少林寺拳法総本山(提供:(公社)香川県観光協会)

少林寺拳法は人格があるリーダーを育てる護身術を身につけるための武道。筆者も少林寺拳法のおかげでリーダーになれました。

「力愛不二」などの少林寺拳法の教えは、現代人が失った心の豊かさや人に必要な優しさを身につけるために必要不可欠です。

あなたも自分や周りの人々を守れる人格者を目指して少林寺拳法を始めてみませんか?

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