【少林寺拳法の型】を解説!実は1人でも練習できる法形なのです

少林寺拳法にも空手のように型があります。少林寺拳法では型のことを『法形(ほうけい)』と呼び、1人で技を練習するためのものです。

少林寺拳法の練習は2人1組で行うことが基本であり、これを組手主体といいます。しかし、相手がいなければ練習できません。

そこで、1人でも基本の技を練習できるように生み出された型が法形なのです。

このコラムでは、少林寺拳法の型(法形)の基本的なものを解説します。少林寺拳法の技の流れを知ることができるので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人

額田善之

少林寺拳法弐段の有段者。
武道の疑問を解決する記事を書くので、ぜひ参考にしてください。
なお、武道だけでなく、旅行や納豆の記事も執筆中。
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少林寺拳法の型とは?

少林寺拳法では型のことを法形と呼ぶ理由は、修行の道として重要な意味を持つからです。少林寺拳法の教えでは、自他共楽という考えのもと、2人1組で間合いや虚実のとり方を学びます。

まず技の基本を1人で練習する必要があるため、法形が大切です。

単独で練習できる単独演武の基本法形について3つを後ほど詳細に解説します。

これらの型に組み込まれている技を2人1組となり練習や演武を行うことを、相対(そうたい)と呼びますが、これは組手と同義です。

単独演武の基本法形

単独演武の基本法形は以下の12種類があります。

  • 天地拳(てんちけん、第1~6系まで)
  • 義和拳(ぎわけん、第1~2系)
  • 龍王拳(りゅうおうけん、第1系)
  • 白蓮拳(びゃくれんけん、第1系)
  • 紅卍拳(こうまんじけん、まんじ之形)
  • 龍の形(りゅうのかた)

なお、少林寺拳法の型には、演武だけではなく、技の基本法形もあります。

技の基本法形

技の基本法形の主なものを紹介します。こちらは組手で練習する技です。

  • 仁王拳(におうけん)
  • 三合拳(さんごうけん)
  • 天王拳(てんのうけん)
  • 龍王拳(りゅうおうけん)
  • 龍華拳(りゅうおうけん)
  • 羅漢拳(らかんけん)

少林寺拳法『天地拳』の法形

天地拳では、攻撃に対する受け技を練習できます。天地拳は、単回攻撃に対する防御の基本を学ぶために法形にまとめられたものです。

例えば、天地拳第1系では、「上段突きを上受で止める」「中段突きを下受で止める」「蹴り上げを払受で止める」といった初級レベルの技を練習するための法形です。

天地拳第1系の動作について説明します。

まず、結手立から、調息、八方目の中、左中段構になる。

  1. 左足前千鳥に出て左拳上段直突、右拳胸前。
  2. 右足やや寄せ足し右拳中段逆突、左拳胸前。
  3. 平馬立になり右拳外受、左拳横鈎突を同時に行う。
  4. 左足開退り右手上受、左拳胸前。
  5. 右足やや後寄せ足、右手内受、左手下受を同時に行う。
  6. 引身になりながら右手打払受、左拳外受を同時に行う。
  7. 右足蹴上げ、直ちに復位。
  8. 右足開退り左手下受し、左一字構えとなり残心。

最後に、結手立し、調息、八方目。

少林寺拳法『義和拳』の法形

義和拳でも、攻撃に対する受け技を練習できます。義和拳は、連続する攻防の基本を法形としてまとめたものです。

例えば、義和拳第1系では「上段突きを外受で止める」「中段突きをで打落受で止める」「蹴り上げを払受で止める」といった初級レベルの技を練習するための法形です。

義和拳第1系の動作について説明します。

まず、結手立から、調息、八方目の中、左中段構になる。

  1. 左中段構から左前千鳥に出ながら左拳上段直突、右拳胸前。
  2. 続けて右拳中段逆突、左拳胸前。
  3. 右足より順退りしながら右拳外受、左手内受、打落受の仁王受。
  4. 仁王構えのままで左足蹴上し、直ちに復位、一字構で残心。
  5. 左足横鈎足に踏み出しながら顔を反対方向に向け、握拳で払受をして全転換。

最後に、体勢を直しながら中段構とし、全転換して正面を向き、結手立、調息、八方目。

少林寺拳法『龍王拳』の法形

龍王拳では、柔法の抜き技の基本を学べます。手首を掴まれた際に、相手から逃れるための抜き技を法形にまとめたものです。

龍王拳の小手抜や寄り抜ができるようになれば、次の段階である手首をきめる技(逆小手など)で相手の動きを止めることができます。

龍王拳第1系の動作について説明します。

まず、結手立から、調息、八方目の中、右中段構になる。

  1. 左足差替えて右手鈎手守法、左中段構。
  2. 左手目打直ちに復位。
  3. 右足前寄足しながら右手小手抜。
  4. 抜いた右手を裏拳にして三合打ち、左拳胸前。
  5. 右へ蟹足しながら左中段直突、右拳胸前。
  6. 左へ横振身しながら右拳上段直突、左拳胸前。
  7. 右一字構になり右足上段蹴上をして、直ちに引いて前に降ろす。
  8. 左手下受をしながら開退り左一字構。

最後に、八方目、残心しつづける。 

少林寺拳法の基本は組手主体

少林寺拳法の修練は、2人1組で行うことを原則としています。これは、相手の動きに対して適切かつ柔軟に対応するためです。

上記したような単独演武の法形を1人で練習し、技の基本的な動きが分かった後に、2人1組みの組手で練習すると技をよく理解でき、効率的に修得できます。

『組手主体』とは実践的な技法を修得すると同時に、共に協力して上達して喜びを分かち合う『自他共楽』にもつながるのです。

2人で行う『天地拳第1系相対』

天地拳第1系の相対では、攻者が法形の前半にあるような攻撃を仕掛けます。これに対して、守者が法形の後半にあるように受けたり、流したりすることで攻守の流れを練習するのです。

攻者と守者が交互に入れ替わり、「止め!」の合図があるまで続けます。

2人で行う『義和拳第1系相対』

義和拳第1系の相対では、攻者および守者はどちらも左中段構で相対します(対構という)。

攻者は法形通りの攻撃を仕掛けるのですが、守者は以下のように攻撃を受け流すように動くことが特徴です。

  1. 相手の上段直突に対して後千鳥で下がりつつ、上受。
  2. 相手の中段逆突に対して下受。
  3. 右上段直突で反撃。
  4. 相手の蹴りを下受。

攻者と守者が入れ替わり、続けます。

2人で行う『龍王拳第1系相対』

龍王拳第1系の相対では、攻者は左中段構えで守者は右中段構の開構から練習を始めます。

手首を握るなど、他の相対とは異なるため、攻者と守者それぞれの動きを解説しますね。

攻者:右手で相手の右手首をつかんで引く。

守者:左足を差替えて鈎手守法をとり、左手で目打ち、さらに踏み込んで小手抜き。抜いた手で裏拳打へ。

攻者:左手で裏拳打を受ける。

守者:右足を差替え、左中段逆突。

攻者:左足を下げて右前で下受。

守者:左前に差替えつつ、右上段逆突および右蹴上。

攻者:大きく順下がりし、右下受。

攻者と守者が入れ替わり、続けます。

少林寺拳法の大会では型(法形)の熟練度を披露

大会場所のイメージ

少林寺拳法では試合はありませんが、演武を披露して、技の熟練度を競う大会はあります。

大会では、髪型から服装まで細かなルールがきめられており、風紀を見出すような恰好では参加できない決まりです。

少林寺拳法の修行は宗門の行であり、心を鍛えることも非常に重要なため、大会はとても厳かな雰囲気で行われます。

演武には時間制限もあり、時間内に素晴らしい出来映えの技を披露できたかが評定のポイントです(技術度と表現度を点数化して合計点で評価)。

少林寺拳法『組演武』

少林寺拳法の組演武とは 、2人1組になり技を自由に創意工夫して組み合わせて攻撃、受けを演じるものです。

ただし、小学生で見習いから1級までは規定演武となり、級に応じた規定の技を組み込んだ構成で行います。

なお、小学生の有段者以上の上級者では、最低限の規定技に自由な技を組み込んだ構成で組演武を行うことが可能です。

少林寺拳法『単独演武』

少林寺拳法の単独演武とは 、1人で技を6構成の組み合わせて演じるものです。

小学生では、帯の色(白と黄、緑、茶)に応じた規定の技を演じますが、有段者(黒帯)では自分で技を自由にきめて演じる自由単独演武となります。

少林寺拳法『団体演武』

少林寺拳法の団体演武とは 、6人で技を6構成の組み合わせて演じるものです。

なお、1および6構成目は単独演武を入れること、2〜5構成目は組演武を入れることが決められています。

全員の動きや息がどれだけ合っているかがポイントです。

少林寺拳法について興味がある方は、関連コラム『少林寺拳法とは?あなたの疑問に有段者の元拳士が分かりやすく解説します!』をご覧ください。

型を練習すれば技の熟練度が向上

画像引用:少林寺拳法 尼崎潮江道院

少林寺拳法の修練では、2人1組で技を実践的に修得することが重要です。

型(法形)だけを練習しても実戦では使えませんが、技を正しく修得するために型を覚えなければなりません。

型を反復練習して技の熟練度が上がれば、組手でも相手に有効打を与えるための修練に入ります。

組手主体でパートナー同士がお互いを高めるために正しい修練をすることが、上達の近道です。

少林寺拳法は心も身体も鍛えることができ、健康維持にも護身にも役に立ちますよ!

少林寺拳法の技については、関連コラム『少林寺拳法の技の基本と種類について有段者が徹底解説します!』をご覧ください。

少林寺拳法に興味がある人は、ぜひお近くの道場を「武道・道場ナビ」で検索してください。

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