剣道は何段からすごい?四段の壁と六段の全国審査が一つの目安

何気ない会話の中で「剣道七段です」と言うと、「すごいですね。でも、何段からがすごいのかよくわかりません」と返されることがあります。

そこで本記事では、剣道は何段からがすごいのか、昇段審査の各段における合格率や難易度なども参考にして一般的な意見をまとめてみました。

また、記事内では剣道の段位基準や受審条件などについても詳しく解説しています。剣道に興味を持たれたら、ぜひ一度近くの道場に見学に行ってみてください。

この記事を書いた人

野川正人

・剣道歴39年
・剣道 錬士七段
一般企業の会社員をしながら、地元中学校の剣道部外部指導員・少年団の指導者として日々活動中。自身の稽古にも継続して取り組んでいる。
剣道の疑問を小中学生や初心者の人にもわかりやすく伝えようとメルマガ、note、ブログにて発信。
2021年に著書「28回も不合格でしたが、なにか?」を執筆し、Amazonにて発売中。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BSBB8SJ2

剣道の段位は何段からがすごい?

剣道の段位はかつては初段から十段まであったのですが、平成11年(1999年)に「称号・段位審査規則」が見直され、九段と十段は廃止されました。現在は初段から八段と定められています。

いったい、剣道は何段からがすごいのでしょうか。

一般的には四段が一つの目安となっていて、その次が六段以上の認識です。つまり、簡潔に述べると、「剣道四段以上はそこそこすごい」「剣道六段以上はすごい」となります。

もう少し具体的に解説しましょう。

剣道の四段以上はすごい?先生と呼ばれるレベル

剣道を始めると、段を取る前に級を受けるところから始めなければなりません。級は主に郡市単位での審査となり、内容も地域によって大きく異なります。十級から始まるところもあれば、十級以下から始まるところもありますが、全剣連で取り決めている級は一級から三級までです。

初段を受けるためには、まず一級を取得しなければなりません。その後、初段、二段と順に昇段審査を受けられます。ただし、順調に昇段できるのは、基本の修得度合いを審査する三段までです。四段からは審査内容が厳しくなるため、合格率も低くなります。

都道府県によっては、三段以下と四段以上の昇段審査を別にしていることもあり、明確な違いがあるようです。したがって、剣道四段を取得している人は一つの壁を乗り越えたことになります。つまり、四段はそこそこすごいレベルです。

四段になると、指導者としてある程度認められ、地方大会の審判員として試合場に立つことも増えます。地方大会の審判員の条件として「四段以上」と記載されている要項も多く、四段が一つの基準といっても良いでしょう。

剣道の六段以上は本当にすごい?八段は神レベル

剣道の四段以上はそこそこすごいと述べましたが、じつは五段以下は各都道府県で開催される地方審査です。全日本剣道連盟としては基準を統一するようにと謳っていますが、実際は大きく異なります。つまり、四段・五段を持っていても、地方によっては誰でも合格できる認識となるでしょう。

審査基準が完全に統一される段位が、六段以上の全国審査です。しかも、六段以上の昇段審査は合格率が低く、簡単に合格できません。したがって、剣道で六段以上を持っているとすごいといえます。

しかし、もっともすごい段位は八段であり、神(仙人)と呼ぶ人も少なくありません。「八段は夢の段」「選ばれた人だけが到達できる段位」などと言われています。NHKのドキュメンタリー番組で「心で闘う120秒 剣道・日本最難関試験に挑む」として取り上げられたこともありました。

剣道の段位とは?最高位は範士八段

地方審査の様子

剣道の四段以上はすごいと知っても、そもそも剣道の段位とは何かがわからなければ、イメージするのが難しいかもしれません。剣道の段位とはどういったものなのでしょうか。

じつは、剣道の段位を取得するには一定の条件があるため、すぐに昇段できるものではありません。また、段位以外に制定されている称号もあります。ここでは段位と関係の深い称号についても詳しく解説しましょう。

剣道の段位について

剣道の段位は、剣道の力量を示すものとされています。試合に勝った、負けたではなく、総合的な力量です。昇段審査では立ち合いをしますが、試合のように勝敗が重要ではありません。

Wikipediaによると剣道の段級位制について、下記のように書かれています。

江戸時代は剣術各流派において師から弟子へ切紙、目録、免許等の伝位が与えられていたが、明治維新後警視庁が創立され組織的な剣術稽古が行われると、各流派の伝位は比較対照の目安にならず、共通基準による格付けが必要になった

Wikipedia「剣道の段級位制」

昔は各流派の免許が与えられる程度が四段と同等とされ、一人立ちできる段位の認識でした。ただし、現在はそのような認識は薄れています。

剣道には昇段審査の他に試合がありますが、試合はスポーツとしての要素が強い印象です。一方、昇段審査はスポーツではなく武道としての要素が濃くなっています。したがって、昇段審査に合格するには基本に則った打突動作や所作が重要です。また、高段になるにしたがって、理合いに則った技術が求められます。

剣道の段位の取得条件

初段から八段までの技術的な内容と受審資格について表にまとめました。

段位規定受審資格
 初段剣道の基本を修習し、技倆良なる者満13歳以上
 二段剣道の基本を修得し、技倆良好なる者初段受有後1年以上修業した者
 三段剣道の基本を修錬し、技倆優なる者二段受有後2年以上修業した者
 四段剣道の基本と応用を修熟し、技倆優良なる者三段受有後3年以上修業した者
 五段剣道の基本と応用に錬熟し、技倆秀なる者四段受有後4年以上修業した者
 六段剣道の精義に錬達し、技倆優秀なる者五段受有後5年以上修業した者
 七段剣道の精義に熟達し、技倆秀逸なる者六段受有後6年以上修業した者
 八段剣道の奥義に通暁、成熟し、技倆円熟なる者七段受有後10年以上修業し、年齢46歳以上の者

表を見るとわかるように、剣道の昇段審査を受けるには、修業期間が必要です。書道や将棋のように、実力さえあれば昇段できるものではありません。

つまり、どんなに順調に合格できても七段までに21年間の修行が必要となります。初段の受審資格が13歳と規定されているため、最短でも七段を受けられる年齢は34歳です。しかも、八段を受審するには、10年間の修行が必要とされています。

修行年数だけを見ても、厳しい世界だと理解できるのではないでしょうか。

剣道は段位以外に「称号」もある

前述したとおり、剣道には段位以外に「錬士」「教士」「範士」の称号が制定されています。それぞれの称号の取得条件は下記のとおりです。

称号規定
錬士・剣理に錬達し識見優良なるもの
・六段を受有し1年経過後に受審可能
・地方代表団体の選考を経て地方代表団体の長に推薦されたもの
教士・剣理に熟達し識見優秀なるもの
・錬士七段を受有し2年経過後に受審可能
・地方代表団体の選考を経て地方代表団体の長に推薦されたもの
範士・剣理に通暁、成熟し、識見卓越かつ人格徳操高潔なるもの
・教士八段受有者で、8段受有後8年以上経過に受審可能
・地方代表団体の選考を経て地方代表団体の長に推薦されたもの、または全剣連の会長が適格と認めたもの

錬士と教士の称号取得はそれほど難しいものではなく、論文を提出して審査費用と登録費用を支払えば取得できます。しかも、以前の教士の称号審査は筆記試験でしたが、コロナ禍以降は論文の提出に変更され、より取得が容易になりました。合格率は発表されていませんが、恐らく100%でしょう。

ただし、範士の称号は過去の実績や功績などが考慮されるため、簡単に取得できません。

余談ですが、かつては現在のような段位の規定がなかったため、錬士五段や範士六段の先生もいらっしゃいました。

剣道の各段位の合格率と難易度

2021年8月に新潟で開催された七段実技審査の合格発表(合格率は約20%)

剣道の昇段審査がどの程度の難易度なのか見ていきましょう。

剣道の昇段審査は段位によって合格率や難易度が異なります。また、五段以下は地方審査のため、基準が同じではありません。また、審査は人間が行うため、同一地域でも毎回合格基準が同じとは限りません。したがって、一つの目安と考えていただければ幸いです。

昇段審査の合格率はどれくらい?

昇段審査の合格率はおおむね以下のとおりです。

  • 初段:80〜100%
  • 二段:60〜90%
  • 三段:40〜70%
  • 四段:20〜60%
  • 五段:20〜50%
  • 六段:20~35%
  • 七段:10〜25%
  • 八段:0.5~1%

地方によって合格率が大きく異なるのは、四段と五段です。昇段審査は相対評価ではなく絶対評価となるため、受審者の技術が優れていれば全員合格もあり得ます。実際、四段や五段でも100%やそれに近い合格率の地域もあるようです。

しかし、四段や五段の審査で全員が合格できるようなレベルの地域はあり得ないでしょう。つまり、地域によって基準が大きく異なることに他なりません。

昇段審査の難易度が高いのは何段から?

令和4年度版 高段者名簿

前述の合格率を見てわかるように、難易度が高くなるのが四段からです。特に八段審査の合格率は0.5~1%と司法試験よりも難しく、国内で最も難しい試験とまでいわれています。現在の八段受有者は全国に約700人です。令和4年度版の高段者名簿に記載されている七段以上の人数が22,979人(令和5年1月)であることを考えると、そのすごさが伝わるのではないでしょうか。

三段までは年齢的にも高校生で取得できますが、四段は最短で受審できる年齢が19歳です。学生の頃から本格的に取り組んでいる人にとって四段はそれほど難易度が高いと感じないかもしれません。しかし、実際は社会人の四段合格率が低く、難易度は高いといえるでしょう。

また、六段以上の審査は全国審査となるため、審査基準が統一されます。四段審査は一つの壁となりますが、六段審査はさらに高い壁です。六段審査は難しいという印象があり、実際に挫折する人や10年以上挑戦し続けている人も少なくありません。

剣道の段位と強さは関係がない?

地方審査の様子

剣道の段位と強さは関係がないと言われることがあります。実際は段位と強さは関係がないとも言えますが、違う視点から見れば段位と強さには関係があるとも言えるでしょう。

実際の試合では、段位の低い人が段位の高い人に勝つことは多々あります。しかし、試合に勝ったから強い、負けたから弱いとは一概にいえません。それは、昇段審査が武道的側面から見ているのに対し、試合はスポーツ的側面から見ているからです。もう少し具体的に解説しましょう。

剣道における試合と昇段審査は趣旨が異なる

剣道における試合と昇段審査は根本的に趣旨が異なるため、必ずしも高段者が試合で強いとは限りません。昇段審査は基本的に同じ年代の人と立ち合いをします。したがって、年齢差があれば、試合での勝敗と段位との相関関係には大きな違いが出るでしょう。

昇段審査では正しい剣道が求められます。とくに初段から三段の審査基準は基本に忠実であることです。一方、試合はどうでしょうか。試合では、多少基本から外れていても有効打突になり得ます。

また、四段以上の審査では理合いに則った攻め合いや打突が求められますが、試合はそうではありません。理合いに関係なく、タイミングを合わせたような打突でも有効打突となり、勝つこともよくあります。したがって、試合に勝つことを「強い」の基準と考えた場合、段位と強さには確実な相関関係はありません。

剣道は試合に強いだけでは昇段審査に合格できない

剣道の試合は試合審判規則に則っていれば、正しい理合いで打たなくても試合には勝てるかもしれません。たとえば、打突スピードが速く、相手よりも先に当てられれば、有効打突になることもあります。

しかし、昇段審査ではスピードに任せた打突だけでは評価されません。つまり、試合では勝てるような打突をしていても、昇段審査で失敗する可能性もあるのです。実際、全国レベルの試合で活躍するような選手が、昇段審査に落ちたということもよく耳にします。

昇段審査は単純に有効打突を奪うものではなく、その過程も重要です。年配の先生に稽古をお願いすると、「この人には敵わない」と感じることがあります。試合では勝てる可能性がありますが、稽古では歯が立たないと感じる人も多いでしょう。

試合と段位はある程度の相関関係があるものの、必ずしも同じではありません。

剣道は四段からがすごいが本当にすごいのは八段

本記事では、剣道は何段からがすごいのかについて詳しく解説しました。

結論は、四段から指導者レベルとみなされ、ある程度すごいと言っても良いでしょう。四段からは地方大会で審判をする機会も増えます。ただし、四段は地方審査となるため、レベルの差が大きい点は否めません。

その点、審査基準が統一されるのが六段以上の全国審査なので、六段以上こそすごいといえるレベルです。ただし、本当にすごいのは合格率0.5~1%の審査を通過した八段でしょう。

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